炭素回収・貯留(CCS)市場規模、脱炭素化技術および業界予測 2026–2034年
二酸化炭素回収・貯留(CCS)市場概要分析 フォーチュン・ビジネス・インサイトズ
はじめに
炭素回収・貯留(CCS:Carbon Capture and Sequestration)とは、発電所や化学プラント、天然ガス処理施設などの産業源から排出される有害なCO₂を回収し、パイプラインやタンカーで輸送した後、地中深部の帯水層や枯渇した油ガス貯留層に恒久的に貯蔵する技術の総称である。気候変動対策とネットゼロ目標の達成において不可欠な技術として世界的に注目を集めており、政府・民間双方の投資が急拡大している。
市場規模と予測
フォーチュン・ビジネス・インサイトズによれば:世界のCCS市場規模は2025年に45億1,000万米ドルと評価され、2026年の53億1,000万米ドルから2034年には199億8,000万米ドルへ成長すると予測されており、予測期間中の年平均成長率(CAGR)は18.03%と非常に高い水準を示している。これは調査対象の化学・エネルギー市場の中でも特に高い成長率の一つであり、脱炭素化への世界的な取り組みの急加速を反映している。地域別では、北米が2025年に59.65%という圧倒的な市場シェアを占め、市場を主導した。
市場トレンド
大規模CCSプロジェクトを実現するための業界プレイヤー間の戦略的コラボレーションが、主要トレンドとして浮上している。単独企業では賄いきれない多額の初期投資(CAPEX)を分担しながら、商業化を加速させる動きが広がっている。2023年7月には、Fluor CorporationがカナダのFCL(連邦協同組合リミテッド)と先進的な炭素回収技術のライセンス契約を締結し、2027年の稼働を目指す20億米ドル規模の再生可能ディーゼルプロジェクトの一環としてCCS技術の統合を進めている。このような産業横断的なパートナーシップが、技術の商業普及を後押ししている。
無料サンプル研究PDFを入手する: https://www.fortunebusinessinsights.com/jp/問い合わせ/リクエスト-サンプル-pdf/100819
市場の促進要因
GHG排出削減を求める厳格な政策の整備が最大の成長牽引力となっている。欧州連合は2023年3月にNet Zero産業法を導入し、2030年までに年間5,000万トンのCO₂注入という目標を設定。デンマークでは同年3月、北海の旧油田を活用したCO₂貯留プロジェクト「グリーンサンド」が稼働を開始した。カナダも2022年に2030年排出削減計画を発表し、CCSの広範な採用を促進する包括的戦略を打ち出している。
増進採油(EOR)との連携も重要な促進要因である。成熟した油田からの回収率を高めるためにCO₂を注入するEOR手法は、排出削減と石油生産増進を同時に実現できるため、北米・中東を中心に積極的に採用が進んでいる。カナダのサスカチュワン州がCO₂輸送パイプラインをCCUSフレームワークの対象として認定するなど、制度的な支援も整備されつつある。
市場の抑制要因
CCS市場の最大の課題は高い初期投資コストと事業実現可能性の問題である。CO₂の回収・輸送・貯留に必要なインフラ整備には多額の資本が必要であり、年間運用コストも相当規模となる。特に、複数メガトン規模のCO₂回収を実現する大型施設の構築は、技術的・経済的ハードルが高く、開発途上国や市場が未成熟な地域での普及を妨げている。また、長期的な資金調達の確保、国境をまたぐ規制の調整、CO₂漏洩を防ぐための継続的な監視体制の整備なども、事業化の複雑さを増す要因となっている。
セグメント分析
回収源別: 天然ガス処理セグメントが市場をリードしている。天然ガスには原料段階でCO₂が多く含まれるため、処理工程でのCO₂分離・回収がコスト効率よく実施でき、排出制御効果も高いことから幅広く採用されている。化学品製造、発電、肥料生産なども主要な回収源として市場に貢献している。
用途別: 専用貯留・処理セグメントが最大のシェアを占めている。CO₂を地質層に恒久的に封じ込めるこのアプローチは、排出削減という最終目標との整合性が最も高く、世界各地でのCCS開発の主流となっている。一方、増進採油(EOR)セグメントは予測期間中に最も高いCAGRで成長する見通しであり、CO₂活用と石油増産の相乗効果が評価されている。
地域別動向
北米は世界最大の市場を形成しており、R&D投資の厚みと稼働中のCCS施設数において他地域をリードしている。米国は2050年までのネットゼロ経済達成を目指し、CCS技術への大規模な政策支援を展開。カナダもESG重視の投資環境のもと、水素ロードマップとCCSを連動させた戦略を推進している。
アジア太平洋では、オーストラリアと中国を中心に大規模CCSプロジェクトの初期開発・実現可能性調査が進展しており、政府の支援策と豊富な地下貯留ポテンシャルを背景に急成長が見込まれている。2021年にはオーストラリアと英国がCCSを含む低排出技術促進の共同戦略を宣言した。中東・アフリカでは、枯渇した油ガス貯留層を活用したCO₂貯留の潜在力が大きく、ADNOCグループが2023年に世界初の完全隔離型CO₂注入プロジェクトを稼働させるなど、実績の積み上げが続いている。
詳細はこちら: https://www.fortunebusinessinsights.com/jp/業界-レポート/100819
競合環境
世界のCCS市場には、Fluor Corporation(米国)、ExxonMobil(米国)、Equinor(ノルウェー)、Shell(オランダ)、BP(英国)、Chevron(米国)、TotalEnergies(フランス)、ADNOCグループ(UAE)、Carbon Engineering(カナダ)、Linde(アイルランド)などの大手エネルギー・エンジニアリング企業が参入している。Chevronは2022年12月にSvanteのシリーズE資金調達ラウンドをリードし3億1,800万米ドルを投資するなど、次世代CCS技術への資本投入が活発化している。ExxonMobilも製鉄・農業など複数の産業セクターとのCCS協定を相次いで締結し、産業横断的なCO₂削減ネットワークの構築を加速させている。
まとめ
世界のCCS市場は、気候変動対策への政策的圧力の高まりと脱炭素化投資の急増を背景に、2034年にかけて18%超の高成長を維持すると予測される。高い初期コストや技術的課題が依然として存在するものの、大規模プロジェクトにおける産業協力の深化、EORとの相乗効果、水素生産との統合といった多様な成長機会が市場を力強く支えている。北米が市場をけん引しつつ、アジア太平洋・中東での急速な台頭が市場の裾野をさらに広げていく見通しである。

